残りの人生、茶材を背に旅して歩く「旅する薬膳師」として生きたい。「静寂庵」一つを私の還る場所として、日本を、世界を旅して回ろう。50歳を機に、私、中村飛鳥はそう決意しました。
なぜ?……答えはシンプルです。
恐れや不安から解放され、幸せに生きたいからです。人間、荷物が多いほど辛くなります。手にしたものを失いはしないかと不安になります。見えない恐怖に怯えていては幸せになれません。
行き会う方々と私の間にあるのは「一服のお茶」のみ。なんと豊かな時間でしょう。薬膳は、自分自身と向き合うための分析ツールです。「一服のお茶」に込められた薬膳・漢方の智慧を共に分かち合い、成りたい自分に成るために心と身体を調えていきます。それが私の目指す「旅する薬膳師」の役割であり、目指す姿でもあります。
私の覚悟を後押ししてくれたのは、その昔、自ら茶道具を担いで日本中を旅して回っていた売茶翁との出会いでした。売茶を始めたのは60歳を過ぎてからといいますから、人間、覚悟さえあれば、生き方を変えるのに遅いということはないのだと勇気がわきました。
お茶は薬として珍重された時代があり、身分の高い人々の飲み物でした。上流階級の文化だった喫茶の風習を、庶民にまで広めたのも売茶翁だといいます。自然の中で茶を煎じ、一服のお茶を通して人々の心に寄り添い、禅の心を説いて回っていた売茶翁。私は大きく心を動かされました。
薬膳、漢方を取り入れた生活を始めて18年。50歳を過ぎ、私も覚悟を決めました。
息子は高校を卒業後、自分で選んだ道を極めるべく、新たな一歩を踏み出します。それを機に、私は出家するためにタイに行きます。無事に僧侶となって帰国するまでの様子も皆様にお伝えしたいと考えています。七転八倒の珍道中になるであろう「旅する薬膳師」の長い旅の物語を、ドキドキしながら一緒に楽しんでいただければと思います。 人は幸せに暮らすために生きています。
幸せになることをためらわず、共に生きていきましょう。