私は「食べる」ことが好きではありません。
いつも一人ぼっちだった幼い頃の残酷な孤独と「食」が、強烈に結びついているからです。
「食」に想いを乗せれば、寂しさと不安を際立てさせるばかりでしたから、私は「食」を捨て、がむしゃらに働いていました。果たして、20代で病に倒れました。瀕死の私を救ってくれたのは、捨てたはずの「食」でした。その時出会った薬膳は、私に「食べる意味」をもたらし、自分との向き合い方を示してくれました。まさに「今」の自分を知るためのツールだったのです。未だに「食べる」ことは好きではありませんが、だからこそ、予断なく「食」と向き合えているのだと思っています。そして薬膳というツールは、私が次世代に手渡せる「幸せに生きるための唯一のバトン」だと胸を張って言えるのです。